「すいませーん開けて下さい!大事な依頼なんです!改生会さん!」

放課後。ドンドンドンと改生会の部室のドアを叩くのは誰であろう、斎藤だ。


紅茶に角砂糖を入れていた棗は、「はぁ…」と深い溜め息を吐く。


「副部長?」


「知らん。」

志暢も疲れた顔で肩を竦める。

中の人の反応など露知らず、斎藤はしつこくドアを叩き続けている。


「…近所迷惑だし話だけでも聞いてやれよ。愛梨。」


「なんで私?」


「雑用係だろーが。」


「依頼って雑用なの!?」


「ただしドア越しだ。中に入れるなよ。」


反論には耳を傾けない主義らしい。愛梨は仕方なくドアに近づいた。


「斎藤さーん?依頼って何?」

「その声は久堂さん?中に入れて下さい!」

「いや副部長がドア越しにって…」

「…入れてくれないと」

「…………」

「高蔵さんが久堂さんに壁ドンしてる合成写真を校内掲示板に張り付けてやります」

「よし入ろう!中に入ろう!そんで紅茶飲もう!」


そんなに嫌なのか。
確かに自分も変な噂が立つのはゴメンだ、と志暢は自嘲気味に笑った。




「…紅茶はミルクを入れても美味しいけど、ストレートティーで飲むのも良いねんなぁ…」

「ごめん興味無い。」


優雅に紅茶を飲む棗を華麗にスルーし、話を進める愛梨のカップに、棗はタバスコをドバドバと入れた。


「斎藤さんは何がお好き?」

「あ…わ、私は抹茶ミルクティーが…」

「…はっ邪道が。」

「樹恵理ちゃんも好きなんです。」

「…………そ、そう」


愛梨たちの会話を小耳に挟みながら、志暢は自分の携帯を使って安樹恵理について調べていた。

そこそこ有名なアイドルなら、ネットでも情報が得られるのではないか、と。


「……安樹恵理…ねぇ」


安樹恵理の情報は出てきた。
しかしそれは少し、志暢の予想とは違ったものなのだった。