「ほらよ、さっきの詫びだ。飲めよ」

「あっありがと…」

ぽんっと温かいココアを投げられる。
季節は春。夕暮れに近づくにつれ、気温は下がる。少し肌寒い体にココアはぴったりだ。


女も自販機で自分のコーヒーを買うと、ベンチに座った。
愛梨も多少、距離を開けて座った。


ごくり、と一口ココアを飲む。
途端に、ほあっと体が温まるのを感じた。美味しい、と愛梨は顔を綻ばせる。

その様子を見ると女は、フッ…と満足そうに自分のコーヒーを飲み始めた。


「…さーて、と。どこまで話したっけ?」

「この学園は転校生を受け付けないって…」

「…あぁ、それは…」

女はもう一口ごくり、とコーヒーを飲む。

「いつか、解る日が来るさ。」

「…………」

「今はまだ、知るべきでは無い。いずれ、知らなければならないことだ。そう焦るな。」

「でも…」

「私もまだ完全に確信している訳じゃないからな。でも大体の予想はつく。それに…」

ことり、とベンチにコーヒーを置く。

「お前…本当は分かってんだろ?どうして自分はこの学園に呼ばれたのか。」

愛梨は俯いたまま、答えない。


そうだ、分かっている。
でも自分はまだ、それを認めたくは無い。

「…私…まだ見つからない…答えが」

愛梨は膝の上に置いた手をぎゅっと握り締めた。


「…探しても、探しても見つからない。
私…一体どうすれば良かったんだろう…」

じわり、と涙が滲む。

「…そうか。」

フゥと女は息を吐いた。

「…あのな」

女はトン、と拳を自分の胸に当てた。

「答えなんてもんはな、いつだってここにある。」

涙が、頬を伝うのがわかった。

「見つからないとするなら、お前はただ忘れてしまってるだけなんだ。答えを無くした訳じゃあない。」


無くしたものは、二度と戻ってこないから。


「…あなたは?無くしてしまったの?…大切なもの…」

「…そうだな。」

女はフッと笑った。


「もう二度と手に入らないものだ。」


だから

簡単に手を離そうとすんじゃねぇ

しっかりとしがみつけ。


後悔するのは、自分自身なんだ。


「一体どっちが幸せなんだろうな。…全てのものに手が届いて退屈するのか」


どれだけ手を伸ばそうと届かないものを、追い求め続けるのか、