「愛梨っ!!!」


突然、大声で名前を呼ばれ、我に返った。


「愛ちゃん!!」

棗にグイッと腕を引かれ、棗もろともズサッと地面に倒れこんだ。


大木が倒れた反動でぶわっと砂埃が舞う。


「うわっゲホゲホッ」

「キャアアアア!!」


ギャラリーの方から複数の悲鳴が上がった。



「あーあ…やっちまったな、転入生。」

「うるせぇ、黙ってろ御崎。まだ、これからだろ。」







「うぅっ…ゲホゲホッ…ハッ!棗、大丈夫?!」


木が倒れて数十秒後、ガバッと愛梨は起き上がった。

「…っはぁ。大丈夫。ウチは平気やで。」

「良かった…!ってそれよりあの子は!?」


慌てて辺りを見回すも、落ちた筈の少女の姿は無かった。

まさか…と心臓が冷たくなるのを感じる。


無意識に木の下へと視線を送ってしまう。



「そんな…がはああぁっ!!」

後ろからガンっ!と殴られ、またもや地面に突っ伏してしまう。


驚きながら振り返ると、

「バカ、こんな手荒な方法取りやがって。もっとマシな案思いつかなかったのか?」


「………志暢……っ!」


そこには「今日1日私に話しかけるな!」と言って去っていった筈の志暢が立っていた。


「…やっぱり来たんやね、部長。」

「勝手に部長にすんじゃねーよ、バーカ」

言いながらも、二人は不敵に微笑んだ。


「…志暢…その子…!」

「ん?おお、コイツな。」

それまで黙って志暢の背後に立っていた少女を見て、わなわなと愛梨は震えた。


「お前らがバカなことしてコイツを落としちまった時、私が間に合ってキャッチしたんだ。」

愛梨は安心したようにガクッと座り込んだ。

少女は申し訳なさそうに言った。

「えっと…迷惑かけてごめんなさい。この子がいたんで、降りられなかったんです。」

そういって彼女の腕から「にゃーん」と一匹の子猫が顔を出した。


「…なんだ…助かってて良かった…!」

「ああ、巻き込まれてたらシャレにならなかったな。良かったな~生きてて。」

彼女らの側には今しがた倒れたばかりの大木が転がっている。

巻き込まれてたら死んでたかもしれない、本気で。



「…棗」

「うん?」

「………手荒な手段取ったわりには私のこと助けてくれたんだね。どうして?」

「別に。特別な理由なんてあらへんよ?あえて言うならこの学園の人たちは派手で危険なことが好きやからなぁ。」


それに、と棗は微笑む。



「アンタは、ウチの死んだ友達に似てたから。」


「……………!」



棗は悲しそうに笑って、もうそれ以上何も言おうとはしなかった。



やがてぽんっと棗の肩に手を置いた者がいた。


「何ですの、志暢ちゃん。」

「お前に一つ聞きたいことがある。」

「はあ…」

「お前、なんで教室に入ってきた時、私に攻撃してきたんだ」


思いもよらぬ質問に、棗は目をぱちくりとさせた。

そして暫くしてから、答えた。


「あそこウチの席やってん。勝手に座られてんのにイラッときて。」

愛梨はもう我慢が出来ずにツッコんだ。

「なら普通に入ってこいやァァァ!!!」


ふと棗と志暢の目が合った。


「…このさより女。」

「…フッお褒めいただきありがとう!志暢ちゃん!」