「…あの子一年生やな。」
「え、何でわかるの?」
「ほら、スリッパの色。赤色や。」
「あ、ほんとだ」
「…多分、入学したてで迷ってもうたんやろな。」
「普通迷って木の上に登るか!?」
棗のとんでもない推測に慌ててツッコむ愛梨。
しかし、近道だからといって屏を登って校内に侵入してきたバカもいるので、完全に否定は出来ない。
要するにバカが多いのだ、この学園は。
「ていうかガラス割って入ってきたコイツもバカだったな…」
「あ?なんか言うた?」
「いえ何もっ」
棗が出す邪険な雰囲気にすかさず誤魔化した。
とはいえ、問題はあの少女だ。
見つけてしまっては、放っておく訳にはいかないだろう(放っておいて去っていったバカもいたが)。
「とりあえず…私先生呼んでくるね!」
言って愛梨は走りだす。
「ちょい待ち。」
棗に腕を掴まれた。
「先生を呼びに行ったらあかん。」
「はっ?なんで?」
だって早くしないとあの子落ちちゃう、と棗に訴えるも、彼女は首を横に振った。
「ウチらだけであの子助けんと。」
「え?」
「…それがウチらへの理事長からの挑戦状らしいわ。」
「はっ?えっ?」
「ほら、行った行った」と棗にグイグイと背中を押され、困惑しながらも木の真下に到着した。
周りには異常事態に気付いたのか、多くの生徒達が集まり始めている。
校舍の中から窓から身を乗り出して見ている者もいる。
「…来たな、里美。」
「ああ、お手並み拝見といこうじゃねえの。」
一方、愛梨と棗は周りのギャラリーに困惑していた。
「何でこんなに人が集まってんの?異常事態なのに…」
「これが学園からの洗礼、みたいやな。これをどう対処するかでこれからのウチらの立場が決まるで?」
「洗礼?ってさっきから何言ってんの?」
「言うたやろ。これは挑戦状やて。ウチらがこの学園に適しているかどうか。そしてウチらの団結力が試されている。」
「…団結力…」
その言葉を聞いた瞬間、志暢の顔が頭に浮かんだ。
「…志暢…どこに行っちゃったの」
愛梨の様子を見、棗はニヤリと笑った。
「部長ーっ!はよ出てきぃやー!!」
部長?と問いかけようとした愛梨だったが、それは叶わず突然、棗にどんっと背中を押された。
「!」
何のストッパーもかけていなかった愛梨はそのままゴンッ!と木に体当たりしてしまった。
「っ!?う…わぁっ!!」
「あ」
木の上にいる少女の体がぐらりと揺れ、そしてまっ逆さまに落ちた。
