琉聖くんは、家の前まで送ってくれた。


『今日は、ありがとう』

「いや」


「なあ、キスは?」

『キ、キ、キス?!』


「一華から、キスしろよ」

『ふえー?!?!』


そ、そんな、ムリだよ。


私をじっと見つめ、キス待ちしてる琉聖

くん。そんな色っぽい目で見ないでよ。


「目、そらすなって」

『で、で、でも』


「いやなのか?」


琉聖くんは顔を右に傾け、軽く唇を尖ら

せた。


チュッ


グンと背伸びをして、琉聖くんの唇に吸

いついた。


もう、死ぬほど恥ずかしい。


「ヤベエ、可愛い」

「オマエ、必死すぎだろ」


ふえー、琉聖くんのイジワル。


「一華、また明日な」


『う、うん。ありがとう』

『あの、琉聖くんの家はどこなの?』


「俺は、杏野」

『杏野?!めっちゃ遠いじゃん』


「別に遠くねえよ」


琉聖くんの家、まったく逆方向だったん

だ。杏野っていったら、ここから歩いて

一時間以上かかる。


『遠いよ』

「遠くねって」


「一華が逢いたいって言ったら、いつで

も飛んでくるよ」


琉聖くん…


「じゃあな」


行っちゃった。


大好き…って、言えなかった。