「少し大人になった葵ちゃんは、相変わ

らず可愛かったけど、何となくどこか違

う気がした」


「素直さ、っていうか、透明感、ってい

うか、何て表現していいのか、分からな

いけど」


「葵ちゃんも、陸上は続けてなかったし

俺は膝の手術をしてから、陸上を離れて

いたから、なかなか接点がなくて、ただ

憧れるだけの毎日だった」


「だんだん派手になっていく姿を見て、

気になったけど、葵ちゃんの苗字が華島

に変わった時、その理由が何となく理解

できた」


「颯真くん、覚えててくれたの?」

「当たり前だよ」


「…驚いた…私も覚えてるよ」


「母とアパートに引っ越してから、公園

に行けなくなっちゃって、颯真くんのこ

とずっと気になってた」


「あの頃、両親は喧嘩ばかりしてたし、

兄は県外の大学だったから、いつも独り

ぼっちで、甘えたくても、頼りたくても

父も母も自分のことで精一杯で、相手に

してもらえなかった」


「どんなに反抗しても、派手な格好をし

ても、注目してもらえなくて、もう私は

いらないんだって思ってた」


「ユウちゃんとのこともあって、段々、

自分が自分じゃなくなっていくような気

がして、とても怖かった」