葵さんのいない、溜まり場。当たり前に

ならないように、葵さんの顔を思い浮か

べてみる。


堕威は肺活量を上げるため、タバコを止

めて、私と棒付きキャンディをくわえて

いる。


「ぐああ、酸っぺえ!!優樹菜のヤツ、

ノンカロリーの買ってきやがったな」


『文句言わないの!ダイのためでしょ、

美味しいじゃない』


「俺はミルクが好きなんだよ!!」


『ガキだなあ』


「うるせえ!!」


相変わらず、口が悪いな。


肩まで伸びた髪が、風になびく。


紗夜に言われて気づいたけど、あんなに

ピンピンはねていた私の髪も、伸びたら

ちゃんとストレートになった。トリート

メントもしたからサラッサラ。自分の髪

じゃないみたい。


気づいて欲しい、琉聖くんに。


少しでも、可愛く映りたい。


なんかキモイな、私。


「一華、戻るぞ」

『はあい』


気づく?気づかない?


気づ…かない?


「いい匂いだな」


『えっ?』

「髪」


『そ、そう?』


廊下で立ち止まると、私の頭に顔を寄せ

て匂いをかぐ琉聖くん。


「オマエ、今日に限って、やたら髪に触

んのな」


『はっ?!』


頭に息がかかる。いつまでかいでるの?

みんなが見てる、恥ずかしいよ。


指ですくと、サラサラと肩へ戻ってくる

髪を見ながら、ニヤリと笑う琉聖くん。