★堕威side☆


「堕威ーっ、やったあ!!」

「うっせえな優樹菜!!声がでけえんだ

よ!恥ずかしい!」


「だって、一位なんだもん!」


ガキの頃から俺は、とにかく足には自信

があった。


それも、オカンの英才教育の賜物ってや

つで、俺と、二つ下の弟の雷威は、とに

かく走らされた。


「パパは、マラソンの選手だったんだか

らね!堕威も、雷威も、才能があるに決

まってるんだから!」


俺ら兄弟は、愛人の子。パパといえども

血が繋がってるだけで、親父には家庭が

あって、父親らしいことなんてしてもら

ったことがない。それどころか見たこと

もない。


祇園で料亭をやってるらしい。それしか

知らねえ。


それでも、オカンは親父のことを愛して

止まない。19で俺を産んだオカンは、

まだ年齢的にも、十分やり直せるはずだ

った。


中学に入った俺は、周囲の期待を一身に

背負った。一年の頃からニ、三年と一緒

に強化合宿にも入り、いっぱしのポジシ

ョンについた。


学校が終われば、オカンに付き添われて

ジム通い。持久力は誰にも負けねえ自信

があった。練習がツライとか、一度も思

ったことがねえし、とにかく走るのが好

きだった。


陸上部のマネージャーは、すげえ綺麗な

女で、優しくて真面目で、俺らの面倒を

よくみてくれた。葵…年上のその女に、

俺も密かに憧れた。