「うるせえ!!今すぐ帰れ!!」

「帰るか帰らないかは、俺の勝手だ!」


「テメエ、明後日は陸上の大会だろが」

「だから何だよ」


「タバコも止めて、死ぬ気で頑張ったん

だろ?勝手な言い分かもしんねえけど、

テメエは、足を洗わせたいんだよ」


「樹は、陸上界で輝けよ!」


「俺の居場所は、ここだ!」


「勝手にしろ!!」


俺は激しい雷雨の中、再びバイクを発進

させた。案の定、樹は後ろからついてき

た。山道は完全に川と化して、ハンドル

が取られる。急カーブを曲がり切れなか

った俺は、滑るように転倒した。


バイクとともに、崖の方へ横滑りしなが

ら、もうダメだと思ったその瞬間、崖側

に樹のバイクが突っ込んで来た。


ガシャーン!!!


物凄い音がして、俺のバイクは反対側に

弾き飛ばされた。


頭が真っ白になった。気が付いた時には

俺は病院に居た。


俺をかばって崖に落ちた樹は、手術室に

入っていた。


樹は、右脚を失ってしまった。


「琉ちゃん、いつも樹の側に居てくれて

ほんとにありがとうね」


「…おばさん」


俺のせいだ。


俺のせいで、樹がこんなことに。


悔やんでももう遅い。俺は最低だ。