全く理解できなかったので取り敢えず断った。勢いでそういう関係になるのは互いによくない。なんたって僕らは出会ってまだ小一時間しか経っていないのだ。

「な、何でですか!?」

こっちの台詞である。

「あのね…まず僕ら、初対面。」
「それくらいわかってます。」
「つまりお互いのことを全く知らないわけだ。」
「…それはこれから知っていけば」
「それに僕を見てみろよ。ほぼほぼ男だよ?それに他の子みたいに可愛くなろうだとかも思わないし、優しくもない。絶対嫌気が差すからやめとけって。」

俯きがちになっていく顔を除き込んで、子供をあやすように説得する。

「…じゃあどうやったら付き合ってくれるんですか。」

僕の手を強く握っていた大きな手がゆるりと離れ、拗ねたような声音に僕はなんだか不思議な気分になった。こいつ慣れるの早すぎだろう。まるで駄々をこねる子供みたいだ。

「…半年経ってもお前が僕のことを好きで、僕もお前のことを好きになってたらいいよ。」

すると今度は手ではなく肩を掴まれ真っ直ぐな視線を向けられた。何かを決意したような、そしてどこか嬉しそうな目。

「俺、絶対アンタに好きだって言わせるから!!」


こうして僕の人生最大のミスは、相校のバスケ部員の記憶に深く刻まれてしまった。