着替えを済ませると体育館へ向かう。初めて来た頃なんかはよく迷ったが、今では迷わず真っ直ぐに行けるようになった。ここは共学であるから女子更衣室も存在するのだろうけれど、流石に他校の女子更衣室に単騎で行けるほど僕の精神は図太くなかった。

「お前やっぱ普通の女子より着替えるの早いよな。なんで?」
「そんなの僕が知りたいよ。」

入って最初に話しかけてきたのは同級生の中神昇平。僕の髪をさらさらにしたような黒髪、背は高い方だけどガタイがいいわけでもひょろっちいわけでもない体型。顔はよくわからないけど女子たち曰くイケメン、らしい。たまに女子に呼び出されているのを見かける。

「んなのそいつが女子じゃないからだろー」

シューズの靴紐を結びながらそう茶々を入れてきたのは秋田弘樹先輩。3年生でありキャプテン及び我が部の部長である。刈り上げた茶髪に筋肉質な体、中神よりも少し高い身長。がさつだけどそれなりにしっかりした性格、女子には優しいということで、女子からは中神とは違った類いで好かれている人だ。が、どういうわけだか僕だけは他の男子と同じ扱いを受けている。酷い。

「へいへいそーですねーじゃあ先輩のボトルには濃度3倍のドリンク入れときますねー」
「げ、それは勘弁」