「…どうせバスケするならさ、面白い方がいいでしょ。」

悪戯をする子供のような無邪気な笑みを浮かべて、アキラさんは告げた。きゅ、となった。きゅん、とかむら、じゃなくてきゅ。
確かにこの人はぱっと見中学生くらいの少年に思える。俺も他の人たちと比べるまでは小柄な男かと思った。でもこうして笑えば、普通に可愛い。そう思うと同時に一種の欲が芽生える。
守りたい、というより捕まえてどこかに隠していたくなるような、そんな衝動。

「渡瀬、ちょっと手伝えー」

後ろの方から虎高のコーチがアキラさんを呼ぶ声がした。はいはいとそっちへ駆けていくのを俺たちは呆然と見届ける。…俺たち?

「…渡瀬って稀に女に見えるよなあ。」
「稀にな。」
「極稀にな。」

いつもの調子でけらけらと笑う虎高の2年の先輩たち。どうやら見惚れていたとかそういうのではなかったらしく、俺はほ、と小さく息を吐いた。

「お、もしかして永谷くん俺らがあいつに惚れたと思った?」

谷川、だったか。アキラさんがそう呼んでいた眼鏡の先輩がによによと気持ち悪い笑みを浮かべる。

「…な、なんか文句でもあんの…ありますか。」

みんなの視線を受けて何だか恥ずかしくなった俺は目を逸らして告げれば一気に大爆笑の嵐が巻き起こった。なんなんだよくそう。