『兼頭海』とは、7月初旬の席替えで、隣になっていた。
・・・今のうちに友達にでもなっておこうか、と和陽は深呼吸をして声をかけた。
「よお」
「・・・よお」
これで、『兼頭海』との初めての会話は「よお」になった。
『兼頭海』は、和陽の顔を見て「あ」と言った。
「お前が『月下和陽』?」
・・・人を指してはいけませんっ!!
「ああ。・・・お前が『兼頭海』」
「お前の名前って矛盾してるよな」
ちょっと気にしてるとこ突かれた。
「ああ。『月の下に和んだ陽』ってわけわかんねぇよ」
「俺は『頭を兼ねた海』だ」
・・・・意味わかんねぇ。
「・・・・・いい友達になれそうだな」
「だな」
和陽と『兼頭海』は、手を取り合った。
誰も、言葉には出さない。目と目の会話だ。
でも、誰でも意味は分かるだろう。
何しろ、友紀に寄ってこられる人2人なのだから。
心の声(和):友紀の相手頑張れ!!
心の声(海):俺はたまにだけど・・・お前はいつもだろ?頑張れ。
心の声(和):鬼かお前ぇ!!
心の声(海):鬼さ、俺は。
心の声(和):・・・巻き込んでやる。
心の声(海):・・・・好きにしろよ。
・・・・・こんな感じだ。
こんなヘンテコな会話だが、このヘンテコな会話で、和陽と海の友好関係は結ばれたのだった。

