「・・・劉」
和陽は頬杖をついて、窓の方を見ながら呟いた。
「・・・なんだよ」
「なんで劉はあそこにいたの?」
和陽は晩御飯を買いに出かけていただけで、誰とも接触していないはずだ。
何故あんな人気のないところに劉がいたのか、分からなかった。
「・・・・・あれは、」
パチン
最後のロープの糸が切れた。
和陽は両足の自由を嬉しそうに確認する。
「おお~!やっと自由だ~♪」
「・・・和陽」
「にゃ?」
劉の少し悲しそうな視線の先には、和陽がいて。
和陽は劉の真剣な顔に、ソファーの上にいるのにもかかわらず後ずさった。
「お前、女なんだから少しは安全な道を行けよ」
「・・・メンドイ」
「面倒でも、だ」
劉は、ジリジリと和陽に近寄りながらも、真剣な表情を崩さない。
「・・・俺以外、お前を助けてやれないんだから」
「ま、シングルマザーな上に無関心な親に助けてもらおうなんて誰も思わないしね~」
「・・・俺の親は、いないも同然だしな」
「・・・・・・」
和陽と劉の貧裕環境は、全く違う。
にもかかわらず、似たような境遇で育ってきた。
無関心な母を持つ、和陽。
100点が取れないからと見捨てられた、劉。
全く違うのに、ものすごく似ている。
「・・・・ねぇ、劉」
「なに?」
「・・・ここに泊まっちゃだめかな?」
「・・・なんで?」
訊かなくても、答えは分かってるのに。

