「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・劉、大丈夫?」
「・・なわけあるかよ・・っ・・」
劉は途中で和陽をお姫様抱っこからおんぶに変えながらも、無事に家の前に着いた。
お向かいなので、両方ともすぐに家へ帰れる。
が。
「・・・手足、ウチで解くか?」
「・・うん」
和陽の手足は、未だ自由を得られていない。
ガチャ・・・
劉は和陽を背負ったまま、電気のついていない家へ入った。
「・・・暗いね」
「親、仕事だし」
劉は電気をつけながら、あたり前のように言った。
和陽はかける言葉を探したが、何も浮かばなかった。
トサッ・・・
和陽は、リビングのソファーに下ろされた。
劉が、棚の中からハサミを持ってくる。
そして、和陽の手を縛っているロープに押し当てた。
シャッシャッシャ・・・・パチパチパチ・・・
「・・・・・一体何重になってんだ、これ」
「さぁ?見る余裕はなかったしなぁ・・・」
「・・・あったら逃げてるだろ」
「そっか」
二人の会話が途絶え、静寂の中、ロープを切ろうとするパチパチという音だけが虚しく響いた。

