羽ばたけなくて

市役所から歩いてすぐのところに、

小さくて可愛らしい建物がぽつんと建っていた。

周りを緑で囲まれた、

見た感じとても素敵なところだった。

公共施設とは思えないほどしゃれた場所だ。

お母さんとヨウ、そして私3人並んで

手を繋ぎながらその建物へと入った。

「すみません。」

入口すぐ脇にある受付であろう窓へ向かって

お母さんが声を掛ける。

中で少し退屈そうに事務処理していた中年女性が、

重い腰を上げゆっくりと近付く。

「はい、どうしましたか?」

その女性職員の声がすごく怖かった記憶がある。

お母さんは一つ咳払いしてから口を開いた。

「あの……。今日、息子の大塚耀紀の面談を

 お願いしているのですが。」

お母さんの言葉を訊いて、

それまで面倒そうにしていた女性職員が

急に声色を変えて、

「はい、大塚さんですね。

 どうぞ、中へお入りください。

 面談のお部屋にご案内いたします。」

と、笑顔で言った。