羽ばたけなくて

ヨウは自分のことを“僕”と言う。

“俺”と変化することなく、“僕”と。

小さい頃の純粋な心のままのヨウが、私は好きだ。

「どう羽衣、高校は慣れた?」

今度は私に向かってお母さんが尋ねる。

私はこくんと小さく頷き、

「うん、友だちも出来たしね。

 今はその友だちと大抵一緒に過ごしてるかな。」

と返事をする。

私の言葉に安心したのかお父さんが横から、

「それは良かった。」

と静かに一言だけ言った。

お父さんの呟いたそのたった一言。

この言葉の裏には

かなりの重みがあるように私には思えた。

私はお父さんの方へ視線を向けると、

「うん。」

とだけ言った。