「ヨウ!」

天使のようにキラキラと輝く笑顔を振りまいて、

ヨウが私たちに手を振りながら走ってくる。

その瞬間、ずっと繋がれたままの手がぱっと解かれた。

それまでの2人の会話がなかったかのように、

雅也は私との間に僅かながら距離を置いた。

またあいてしまった微妙な距離に私の心は少し重くなる。

ようやく私たちの元に着いたヨウは、

私の隣に立っている雅也を見ると

もう一度にっこりと笑った。

「えっと……、雅也お兄ちゃん! こんにちは。」

ヨウの言葉に私は驚きのあまり目を丸くした。

だって、ヨウは人の名前を覚えるのが苦手なはず。

夏休みに遊んだあのたった1回で

雅也の名前を覚えているなんて、

自分の耳を疑ってしまうほどだ。

美園や大志ならたくさん話していたから

分からないでもないけれど、

口数の少ない雅也の名前を記憶しているなんて。

「こ、こんにちは……」

元気なヨウの挨拶に圧倒されてしまったのか、

雅也もまた戸惑いながらも返事をする。

そんな雅也のことを気にせず、

ヨウはさらに言葉を続ける。

「雅也お兄ちゃん、ありがとう。」