ほんのりクリーム色のラフな部屋着に着替えた私は、

自分の部屋を出て真っ直ぐ

一番奥の部屋の前へと向かった。

この部屋の前に立つといつも緊張が走る。

それもそうだ。

この部屋は私の両親の寝室兼書斎なのだから。

普段滅多に入ることのないその部屋。

きっとこれからも

中に足を踏み入れることはないであろう。

一呼吸おいてから、私はそのドアを2回ノックした。

すると間髪いれずして、

中からダンディーな低音ボイスが聞こえてきた。

「あぁ。何か用か。」

私は部屋の奥に座っているであろう

声の主に届くように声を上げた。

「お母さんがね、もうすぐご飯だって。」

私の言葉に素早く反応したのか、

椅子から立ち上がる音がしたかと思うと、

すぐさま部屋のドアが開いた。