羽ばたけなくて

“雅也の家は私と逆”

確か、少し前に雅也は

「私と同じ方向に家がある」と言っていた気がする。

でも、今の大志の言葉はそれとは全く違うものだった。

「え、そんなことないよ。

 雅也の家は私と同じ方向だって……」

私の言葉は大志の言葉でかき消される。

「俺、訊いたことあるんだよ。

 違うクラスの友達に雅也と家が近いってヤツがいてさ。

 夏休みにそいつん家行ったら、

 羽衣とは真逆の方向だったんだよ。

 でも、雅也はいつも羽衣と一緒に帰るから、

 変だなって思ってさ。」

私の胸がどくんと大きな音を立て始める。

大志の言い分を信じたら、

今まで私の中にあったさまざまな疑問が全てスッキリする。

駅前にある街で唯一のDVDレンタル屋を知らないこと。

昔からある喫茶店を知らないこと。

そして、登校時間に一度も会わないこと。

私は鼓動が早まるのを感じながら、

そっと雅也へと視線を向けた。

隣に座る雅也は

すでにいつもの落ち着きを取り戻しているようで、

表情ひとつ変えずに大志を見ていた。