羽ばたけなくて

私たちはその音のする方へ視線を向ける。

目に飛び込んできた姿に誰もが驚き、息をのんだ。

美園は身体を強張らせながら小さな声で呟く。

「新堂さん……」

美園の執事である新堂さんが、

どういうわけかこの学校の屋上に姿を現したのだ。

絶対にいることのないその人の姿に、

みんな唖然として声が出ない。

ただ、

美園を抱きしめる大志の力が少し強くなったのを、

私は見逃さなかった。

新堂さんは不敵な笑みを浮かべながら

美園と大志の前で止まった。

「美園お嬢様。お迎えに上がりました。」

そう言って、

右手をさらりと差し出すしなやかな動きに、

私は恐怖さえ感じ始めていた。