羽ばたけなくて

ふと視線を隣へと向ける。

いつもは冷静な雅也が、

顔を真っ赤にしながら安陪君をキッと睨みつけている。

しかし安陪君はそれに構うことなくさらに言葉を続けた。

「雅也くん。キミさ、大塚の彼氏なの?」

「だから、雅也は彼氏じゃ……」

私が慌てて安陪君に向かって叫ぶと、安陪君がそれを遮った。

「違うんだったらさ、大塚、俺と付き合わない?」

こんな言葉をさらっと言ってしまう安陪君に

私は戸惑いを隠せない。

あの頃の彼は、物静かで真面目なタイプだった。

でも、今、私の目の前にいる彼は、

別人と思うほど軽く、へらへらと笑っている。

「でも、私は……」

どうにか逃げようと言葉を探していると、

「お前みたいなヤツと羽衣が付き合うワケ、ないだろ。」

捨て台詞のように雅也が乱暴に言うと

私の左手をぎゅっと握り締めた。