羽ばたけなくて

それっきり私たちは言葉を交わすことなく、

ただただ向かい合わせに座っていた。

とっくに飲み終えてしまった雅也は

本棚から雑誌を持ってくると、

パラパラとページをめくっている。

会話のない静かな空間なんだけれど、

私には不思議と息苦しさを感じなかった。

むしろ、心地良く感じていた。

雅也と2人きりというだけで、

私の心は十分満たされていたから。

私は自分のペースでアイスミルクを飲み終えると、

それを確認していたかのように雅也は読んでいた雑誌を閉じる。

「出るか。」

静かに言うと、雅也が席をすっと立つ。

私もそれに続くように席を立ち雅也の後ろを歩く。

会計はとっくに雅也が済ませていたようで

私たちはそのまま店を出た。