羽ばたけなくて

雅也も私に並ぶようについてくる。

ふと私はあることを思い出した。

この間―――、

美園たちにヨウのことを告白しようとした日の朝に

不思議に思っていたこと。

雅也は私の家近くに住んでいるはずなのに、

どうしてこの街のことをほとんど知らないのだろう。

レンタルDVD屋さんであった時だって

「初めてだ」と言っていたし、

今だってこの周辺にある喫茶店を知らない。

雅也は……本当に近くに住んでいるのだろうか。

でも、近くに住んでいなければ

私と一緒に帰るはずがない気がする。

そんなことを考えているうちに目的の喫茶店へと着いた。

レトロな雰囲気が漂う小さな小さな喫茶店だ。

雅也がすっと私の前に立ちドアを開ける。

「どうぞ。」

こういうさりげない優しさが私の心をくすぐる。

「ありがとう。」

雅也の好意を受けるように私は喫茶店へと入る。

私が入ったのを確認してから雅也も後に続く。

そして店員さんに一番奥にある窓側の席へと案内されると、

私たちは向かい合わせに座った。

お互い飲み物を頼み終えた時、早速、雅也が口を開いた。