羽ばたけなくて

「やっべ。もう6時かよ。」

店内にあるピエロのからくり時計を見ながら

大志が大声で叫ぶ。

表情には余裕のない焦りが見え隠れしている。

そんな大志の姿を横目で見ながら、

美園はまだ半分ほど残っている

ソフトクリームを優雅に舐め、

「“まだ”6時じゃん。大志、何か予定でもあるの?」

とゆっくりとした口調で訊ねる。

美園のこういう姿を見ると、

彼女がお嬢様だいうことを思い知らされる。

私たちと若干、

時間の流れというか感じ方が違うのだ。

大志はスッと席を立つと置いていたカバンを手に持ち、

「悪ぃ。俺、これから約束があるんだ。」

と言い私たちに向かって両手を軽く合わせると

慌てて店を飛び出した。