羽ばたけなくて

ハッと我に返り、私は素早く手を軽く振りながら、

「私だからなんて、そんな事ないじゃん。

 ね、雅也。」

と冗談めかした声で言った。

そういう私の心臓は、

これ以上ないくらいに暴れて息をするのも苦しい。

この問いかけに雅也が「違う」と言ってくれるのを、

心のどこかで期待している自分もいる。

でも、

……やっぱり私にはこうすることしか出来ない。

“普通の”女の子が舞い上がる出来事も、

全て冗談としてその場を流してしまうことしか。

“こんな私”が恋愛感情なんか出してはいけないんだ。

そんな私の気持ちなんか全く知らない雅也は、

ただ黙って首を縦に振った。

「ね、やっぱり。

 雅也はただ味見しただけだもんね。」

明るい声とは裏腹に、私の心が少しだけ傷つく。