羽ばたけなくて

美園の興奮はまだ冷めないようで、

今度は雅也の方へ身を乗り出し、

抹茶ソフトを差し出しながら訊いた。

「じゃあ、私のも食べてよ。抹茶美味しいよ。」

しかし、雅也は差し出されたそれを見て

顔を横に振りながら、

「俺、抹茶、苦手。」

とこたえた。

雅也って抹茶、苦手なんだ。

私、雅也には苦手なものはないと思っていた。

もちろん、私の勝手な想像なのだけれど。

「羽衣だったから舐めたの?」

美園が粘るように雅也に質問する。

「さあね。」

牛乳ソフトを食べ終わった雅也は

少しだけ微笑みながら言った。

ただ、私の言葉を訊いたから

舐めただけなんじゃないの?

それとも美園の言うとおり、

“私だから”舐めたの?

だとしたら―――

私はしばらくの間、

雅也の最後の言葉が耳からはなれなかった。