男の人の涙を、私は始めて目の当たりにした。

こんなにも情熱的な涙なのだろう。

でも、きっとこの姿を

見られたくないであろう大志を気遣い、

私は大志へと向けていた視線をすっと外した。

そして、路上に広がったままの美園の傘を手に取り、

丁寧にひだをたたみ始めた。

心が深く傷ついている美園をかばうようにそっと優しく。

パチンとボタンを閉めた後、それを私の右手首にかけた。

「……どうすりゃ、いいんだよ。」

感情をそのままに声を震わせながら大志が呟く。

「俺の……、

 美園への気持ちはどうすりゃいいんだよ。」

これまで募らせてきた美園への深い想いと、

今ここで新堂さんから守りきれなかった

悔しさが入り混じって、

言葉だけが宙に浮いていた。