羽ばたけなくて

「うん、美味しい。

 やっぱ、このお店のは最高だね。」

ペロっと舐めながら美園が感心したように言う。

「それにしても、雅也っていつも牛乳ソフトだよね。

 ちょっと冒険してみようとか思わないの?」

私が黒胡麻ソフトを舐めながら言う。

私や美園、大志はここにくると

毎回違う味を頼んで楽しむのだけれど、

雅也は牛乳ソフト以外頼んだことが一度もなかった。

そして今日もまた変わらず牛乳ソフトをほお張っている。

「別に。オーソドックスだし。」

雅也は私に視線を軽く合わせながら言う。

冷静すぎる雅也の態度がつまらなく感じて、

私は小さく溜め息をついてから呟いた。

「……黒胡麻ソフト、

 めっちゃ美味しいんだけどなー。」

そんな私の小さな独り言を訊いたのか、

雅也がいたずらっ子のような表情を浮かべた。

「そんなに美味しいの?」