いつもの帰り道。

雅也の少し後ろを歩く。

会話なんてそれからほとんど交わされることもなく、

ただただゆっくりと帰り道を2人歩いた。

時折吹く生暖かい風が、

今はなんだか心地良く感じる。

そして、私の家の前で私たちは足を止めた。

雅也はこれまでと同じように私に目で挨拶を交わすと、

また歩き始める。

私は思わず雅也の後ろ姿に向かって、

「今日は、……本当にありがとう。」

と声を掛けた。

雅也の足がすっと止まる。

そして、私の方へと振り向くと、

「羽衣。もう大丈夫だよな。」

と訊いてきた。

私は「うん」と言い大きく頷くと

雅也は微かに微笑む。

「“壁”、ぶち壊せよ。」

そういい残すと、

雅也は右手を軽く挙げ歩き始めた。