羽ばたけなくて

「“壁”……?」

その意味が分からなくて、

私はじっと雅也を見つめる。

私自身で壁を作ったって、どういうこと?

「俺は中学ん時のお前を知らないし、

 どんなことがあったのかも分からない。

 でも、お前はその時に、

 心に“壁”を作っちまったんだよ。

 分厚くて大きな“壁”。

 ……この“壁”、どんな意味か分かるか。」

ふと雅也に訊かれ、私は首を横に振る。

雅也は溜め息混じりにさらに言葉を続ける。

「弟のこと、自分自身の中で押し殺したんだよ。

 表面上は弟と『普通』に接してるけど、

 心の奥底で『障がい者』っつー

 “見えない壁”で覆っちまったんだよ。

 お前が一番嫌いな『差別』を、

 お前自身の中でやっちまってんだよ。」

雅也の言葉に、私の心がズキンと痛む。