羽ばたけなくて

私の知る雅也じゃない。

目の前で大声を出すその姿は、

雅也とは明らかに違う別人のようだ。

身体を突き抜けるような鋭い視線に、

私の脚が自然とガクガク震え始める。

「な、なにがわかってないって……」

蚊の鳴くような小さな声で雅也に訊く。

しかし私の問いかけにこたえようとはせず、

じっと私へと視線を向け続ける。

その視線が怖くてたまらないはずなのに、

私はそれからそらすことができないでいた。

そんな状態がしばらく続いた後、

雅也はそれまで私の両肩をがっしり掴んでいた手をはなし、

口を開く。