羽ばたけなくて

雅也との間にある拳1つ分の空間。

いつもと同じ距離のはずなのに、

この隙間が今日はやけに遠く感じさせる。

「いつまでそうするつもりだよ。」

唐突に雅也が言う。

その言葉に怒りが見え隠れしているのは、

多分気のせいではない。

胸がざわつくのを感じながらゆっくりと口を開く。

「いつまでって……」

でも、こたえに詰まってしまう。

きっと雅也は、昨日のことを言っているに違いない。

「ま、雅也だって私のこと嫌だと思ったでしょ。

 古澤君やひーちゃんと一緒で、

 私のことバカな子だと思ったでしょ。」

本当はこんなこと言いたくない。

本当は自分に素直になりたい。

でも、私の口から出てきた言葉は、

なんとも酷く醜い言葉だった。