羽ばたけなくて

美園の寂しげな目。

それを思うと心がぎゅっと苦しくなった。

「ごめん。俺、1人で帰るわ。」

力なく大志が言うと、

視線を合わせることなく階段を下りていった。

私と雅也が、残った。

別に今までとなんら変わりないことなのに、

今日はなんだかここに漂う空気が違う気がする。

美園の告白があったから?

それもあるかもしれない、でも……。

雅也に話しかける勇気なんてない私は、

無言のままただひたすらに歩いた。