羽ばたけなくて

「美園は……。

 美園はその相手とそのまま結婚していいのかよ。」

大志が声を荒げて言う。

しかし、美園は遠くを見つめたまま

こたえようとはしない。

その表情が儚く、切ない。

少しの間の後、

美園は何事もなかったようにふっと柔らかい笑顔を見せ、

「じゃ、またね。」

と言って、パタパタと川沿いの階段を駆け下りた。

美園からの突然の告白に、

私たちの口から言葉が出ない。

許婚ってことは、

美園は好きな人と一緒になれないってことなの?

どんなに好きで離れたくない人ができても、

それは叶わないの?