羽ばたけなくて

「チェ」と軽く舌打ちすると

大志は両手を頭の下へと回した。

照りつける夏の日差し。

さっき掴もうと手を伸ばした雲は

形を変えどこかへと行ってしまった。

私は今度は雲の形を見ながら想像を膨らませ始めた。

あの雲は……ドーナツに見えるな。

ふわふわのスポンジっぽい生地の。

その隣の雲は……ソフトクリームかな。

口どけのいいバニラ味のソフトクリーム。

そんな私の妄想を読み取ったかのように、

「ソフトクリーム、食いてぇ。」

とぽつりと呟いた。