羽ばたけなくて

玄関の閉まる音が遠くの方で響く。

途端にいつもの家がちょっぴり広く感じるのは、

私の気のせいだろうか。

「さてと。」

特になにもすることなんてないのに、

なんとなく声に出して無駄に両腕を振ってみる。

あらかた片付け終わっている部屋では

掃除なんかも必要なさそうだ。

とりあえず今飲んだグラスを洗っておこう。

グラスを手に持ちキッチンへ行くと、

洗剤をふわふわと泡立てて丁寧に磨き、

蛇口をひねる。

「ねえ、お姉ちゃん。」

ふと後ろからヨウの声が聞こえ、その方を振り向く。

「ん、どうした?」

ソファに座りながら

ヨウがいつもと変わらない温かい笑顔を見せ、

私の方を真っ直ぐに見つめている。