あぁ、またいつもの台詞がでた。

お父さんは私が少しでも大人ぶると

すぐにそう言ってくる。

“まだまだ半人前”そう私を説得させるように。

「お姉ちゃんからもらった貝殻、

 いっつも持ってるんだ!」

目をキラキラと輝かせながら

ヨウはズボンのポケットから貝殻を取り出す。

混じりけのない真っ白で透き通った貝殻。

砂浜で休んでいる時に

たまたま目に付いたそれを手にした瞬間、

ヨウの顔が私の頭に浮かんできた。

その貝殻はヨウそのもののように思え、

そのまま持って帰ってきたのだ。

こわれないようにそうっとタオルに包んで。

そしてヨウにお土産として手渡した。

それを見たヨウは、

壊れ物を扱うように両手でそっと受け取り、

天使のような笑顔を私に見せたのだった。

「その貝殻、綺麗だよね。ヨウにピッタリだよ。」

私がそう言うと、ヨウはもう一度にっこりと微笑んだ。

「ところで、明日は本当に大丈夫か?」