羽ばたけなくて

美園は普段、全く家事をしない。

お嬢様育ちの美園にはそれらを全てやってくれる

家政婦が何人もいるのだ。

だから当然のごとく、料理の基本も知らない。

そんな美園が気持ちだけでも

料理をしてくれたことに感激した。

私はその場を立ち上がると両手を口に当てながら、

「今いくー! 美園のカレー、早く食べたぁい。」

と大声で言った。

「だから羽衣、

 美園じゃなくて俺が作ったんだっつーの。」

大志は少しムキになりながらも楽しそうに突っ込む。

そんなやり取りをよそに、

雅也はすっと立ち上がり別荘へと歩き始める。

私も雅也の後を追うようにして歩き始めた。

この砂浜で雅也と過ごしたことをそっと胸にしまいながら。