羽ばたけなくて

あんなに鮮やかに照らしていた夕日が、

ゆっくりと水平線へと吸い込まれようとしている。

「もっと自信持ちなよ。」

ふと隣から声をかけられた。

その言葉の意味がわからずにしばらく黙っていると、

雅也は言葉を続けた。

「ずっと隠してたろ、その水着。羽衣に似合ってるから。」

雅也は遊びながらも気付いていたんだ。

私がどうにかみんなの視線をそれから外そうとしていたのを。

私が海に浸かるふりしてそれを隠していたのを。

急に恥ずかしくなって思わず重ねていた手を引き抜いた。

「そ、そんなこと……」

私の反論なんか弱々し過ぎて説得力に欠ける。

それなのに私の口からは悲観的な言葉しか出てこない。

「似合ってなんかないって。

 私、そんなにスタイル良くないし。

 美園みたいに着こなせないし、それに……」

言っている自分がどんどん惨めになってくる。

でも、どうにも止められなかった。

そんな私の言葉を遮るように雅也はたった一言だけ、

「羽衣には羽衣の魅力がある。」

と静かに言った。