羽ばたけなくて

余程、大志の反応が面白かったのか、

美園は真っ先に大志へとにじり寄る。

「サイダーふくってことは、

 大志にはいるんじゃない? 気になる人。」

美園に言い寄られ大志の顔がみるみるうちに赤く染まる。

「そ、そんなヤツ。いねーよ!」

美園と視線を合わせずに大志は乱暴な口調で否定する。

この反応、きっといるな。

そんな事を思いながら、

私は大志の背中をさすり続ける。

美園は視線を合わせようとしない大志の顔を

覗き込もうとする。

しかし、大志は美園を近づけまいと手を振り回す。

「ま、いいや。大志には“いる”ってことで。」

美園が人差し指を口元に添えながら呟いた。

「だから、いねーって!」

大志の言葉は

どうやら美園の耳には入っていないようだ。

ところで、大志の気になる人って、

誰なんだろう?