そっと、人の手が私の頭を撫でた
「ん?どうした?拓海?」
「いや、なんか、どっかいってしまいそうな顔してたから」
「ん?なにそれ?
私は此処にいるよ、何処にもいかないよ
ただ
ちょっと昔のこと
思い出してただけだよ」
「そう……
コーヒー入れるよ、飲もう」
「そうだね」
先生、
あの時10歳の拓海はもうすぐ18になりんですよ
私ももう、32なんですよ
それでもまだ、先生の方が歳上ですね
16歳って思ってたより大きいですね
先生といた時は
全然、年の差なんて感じなかったの
拓海はね
年を追うごとに先生に似ていくの
時々、先生と同じ目をするの
私は不思議な感じがするわ
先生を失った時は
本当に悲しかったけれど
拓海がいたから
私は強くいられたの
先生には
拓海を残してくれたこと
とても感謝してるの
でもね、先生、
私はね
貴方に出逢った20の時より
貴方を失った24の春より
ずっとずっと貴方に恋をしているの
記憶の中で
貴方を思い出すだけで
私は貴方に恋ができるの
それだけで、
私はもう充分に満たされるの

