「元気になって、本当に良かった」
護くんは私の隣に立って、みんなの元に駆け寄って行く悠を優しい眼差しで見つめる。
「でも熱が引いたばかりだから、もう少し大人しくして欲しいんですけどね」
「気苦労が絶えませんね」
溜息交じりに母親としての本音を言うと、護くんはクスクス喉を鳴らして笑った。
「はい。でも、悠が笑ってくれていると安心します」
「そうですね……あ、そうだ。はるさん、昨日の話なんですけど――」
悠が離れたのを見計らってか、私の耳にそっと小声で話しかけてくる。
昨日のってことは、裕貴との事に違いない。
「俺の大学時代の友人に、父親が弁護士をしている人がいるんです。悠と一緒に会う気はありませんか?」
「悠も一緒に?」
言ってる意味がわからない。どうして、悠も一緒じゃないといけないの?
まだ幼いあの子には、知られなくていいことだと思うのに――。

