「ごめんなさい。こんなに遅くまで引き止めてしまって」
見送りするために玄関先で向かい合う私たち。
「いいえ。俺が残りたくて居たんですから、気にしないでください」
護くんはスニーカーを履き、つま先をトントンと鳴らしている。
「じゃ、はるさん。おやすみなさい」
「今日は、本当にありがとうございました」
深く頭を下げて、お礼を言う。
熱を出した悠をここまで連れて来てくれたこと。私の昔話を何も言わず聞いてくれたこと。
そしてこれからのことをについて、力になってくれると言ってくれたこと。
全てに感謝しなくてはいけない。
それに、私のことを好きだと言ってくれたことも。
今は彼の思いに答えを出すことは出来ないけれど、いつかきっと――。
彼の背中を見送り、悠が眠る部屋へと向かう。
小さな胸を上下させて、静かに寝息を立てている我が息子。
悠の隣に横になって、彼の胸をトントンとリズムよく叩く。
たった一人の愛しい息子。何があっても、守るからね。

