考えを巡らせていくうちに、ある結論にたどり着いた。

社会人して、こんな事してはいけないと思う。

だけど、今の私にはそうするしか方法がない。


その日のうちに婦長に会い、ある物を手渡した。

一瞬、怪訝な顔つきで私を見たけれど、総てを悟っているかのように

婦長は何も言わずソレを受け取ってくれた。



「楽な道のりじゃないわよ。お気張りやす」



最後にかけてくれた、その言葉。

婦長は京都出身らしく、時々方言が出る。

私が新人で入った時に指導係をしてくれたのが婦長だ。

それからいろいろ気にかけてくれて、まるで本当の姉のように慕っていた。


「気張る=頑張る」彼女なりの、メッセージ。

きっと婦長は気付いてたんだろう。私と裕貴が付き合っていた事を。

もしかしたら、妊娠していることも気が付いているのかもしれない。


私は、彼女に深く頭を下げて病院を後にした。

そしてマンションに戻ると、必要最低限の物だけバッグに詰め込み電車に飛び乗った。