彼の姿を見るや否や、悠は更に私の腕を引っ張る力を強め走り出す。

それにつられて、転ばないように細心の注意を払いながら足早になる。



「一ノ瀬センセ、おはようごさいます」

「おはようございます、はるさん。今日も、可愛いですね」



三日月のように目を細め柔らかい笑顔を浮かべる、一ノ瀬センセ。

時々、変なお世辞を言ってくるのが玉に瑕。

30歳の私に可愛いとか、一ノ瀬センセの感覚はちょっとズレてると思う。

彼の年齢なら、可愛い子なんて周りに沢山いると思うしね。



「イチにぃ、おはよ」

「おはよう、悠くん」



目線を合わせるように、腰をかがめて挨拶をする。

こうやって園児一人ひとりに、目線を合わせてくれるところ凄く嬉しい。

大切にしてくれてるって思えるから。



「イチにぃ。そんなんじゃ、一生掛かってもハルには気付かれないよ」