「悠……一ノ瀬センセ、早く中へ」



少しでも楽になるように、悠の背中を何度も撫でる。

そして病院の中へと促した。



「はい……あ、でも」



彼の目が、さっきまで私が話していた相手を見詰める。

あ、まだ居たんだ。帰ってって言ったのに――。



「いいから、早く」

「はい」



戸惑いつつも、一ノ瀬センセは何も聞かずに中に入ってくれた。

後でお礼、言わなくちゃ。



「悠、どうかしたのか?」



すれ違いざまに、少し慌てた様子の裕貴が声を掛けてくる。

“悠”って気安く呼ばないでほしい。