「俺ね、“家族”って言葉には昔から憧れてたんだ。だけど、どうやって家族になれるのか分からなかった。保父になってからも、良く分からなくて……」



家族……両親の顔を知らない護くんは、人を愛する気持ちはあっても

家族とは、どういうものなのか理解できなかったのかもしれない。

神谷さんと一緒に住んでも、彼も忙しい人だ。

家族との時間というのは、あまり取れなかったのかもしれないと感じる。



「だけど、はるさんと悠に出会って……お互いを必要として支え合ってるのを見て、家族ってこういうことなのかもしれないって思えたんだ」



くしゅん……

小さなクシャミが、下から聞こえた。



「悠、寒いの?」

「ん……ちょっとだけ」



悠は、ぶるっと身震いをすると、首を竦ませコートをたくし寄せた。

屈んで彼の小さな手を握れば、凄く冷たくなっていて

思わず悠を抱きしめ背中を摩る。

少しでも温かくなるように――。