突然の告白に、目を見開き驚いた。



「俺、生まれてすぐに母親に捨てられて……施設で育ったんだ」



彼の口から次々と語られる真実に、手が震える。

これは寒さじゃなく、心が体を伝わってきているものだ。



「父親も母親も知らない。今までは、それでも平気だった。だけど、この前はるさんに両親に会わせてって言われて……初めて、両親を探そうと思った」



「ゴメンね、時間が掛かって」と彼は続けた。

その顔はとても切なくて、今にも消えてしまいそうなくらい儚い。

会わせて、なんて言わなければよかった。

自分の口から出てしまったのものは、取り返すことが出来ない。

それは分かってはいるけれど、彼を傷つけただけなんじゃないかって後悔した。



「ごめんなさい。私、知らなくて――」



護くんと繋いでた右手が、冷たい。

でも今、もう一度彼と手を繋ぐことが躊躇われる。



「はるさんが謝ることないよ。誰にも言ってなかったんだから、知らなくて当たり前」



クスリと笑うと、もう一度十字架の墓標に視線を落とした。