小高い丘に連なる、墓石。緑あふれる敷地内に、ひっそりと佇むそれらは
ただ静かに、自分たちの家族や友人が訪れるのを待っている。
私は線香と菊の花束を買い、そして水桶を借りて目的の墓石へと向かう。
「確か、この辺だったと……」
記憶を辿って、道を歩いて行く。
そして暫く歩いた、一角に目が留まった。
『平野家』と書かれた、御影石の洋風な墓石。
「これが、お爺ちゃんとお婆ちゃん?」
「そうよ。悠が生まれる、ずーっと前に天国に行ってしまったの」
「はるさん……」
それまで黙っていた護くんが口を開く。
神谷さんに会いに行った日。
最後に聞かれた言葉。護くんは私の両親に挨拶をしたのかって。
その言葉で、私は彼に何も言ってないことに気が付いた。
だから彼のことを聞く前に、私のことを話そうと決めていた。

